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簡単には傘をささない

職場のフロアからは外が見えない。エントランスに降りて、手ぶらで外に向かう私に警備員さんがもの言いたげに視線を向けてくる。やっぱりなと思いながらストールを巻きつけて出た外は強い雨ではないものの、雨粒が大きい。しっかりと濡れる。それでも私は体にストールを巻きつけるだけで急ぎもせずにすぐ隣のドラッグストアへ歩いていく。何食わぬ顔で職場のビルに戻り、その時警備員さんはもう別に私に目を向けない。なんだか不意に、これが私の歩み方なのか、と思った。