
指揮棒は思ったよりはるかに重い
小学生の時、鼓笛隊では小太鼓を担当した。
なんで小太鼓を選んだのか、まったく覚えていないけれど(小太鼓は立候補しないとできない類のやつだ)、その時に覚えたリズムはまだ覚えている。
そう、リズム隊だ。
バンドではドラムが要って聞くけれど、それと似ている。
大抵の曲はリズムの前奏から入る。
そんなリズム隊より花形なのは指揮者だ。
主指揮者が一人で副指揮者が二人いた。なんといっても指揮棒と笛でリズムをとる姿がかっこいい。
けれど、その姿を見るのが自分は辛かった。
なぜか。
必死に主指揮者がリズムをとっているのだが、はじめはよくてもどんどんリズムがずれてくるからだ。
小学生のことだ、指揮を見て合わせるということができない。どんどん先行して、最後は指揮者がその全体のリズムに自らを合わせて行く。それを見るのがいつも忍びなかった。
リズム隊の一員なのだから自分にも責任はある。けれど全体に合わせるほかない。
こんなはずではなかったのに、と指揮者の子は思っていただろうか。仲がいい子ではなかったので、気持ちを聞いたことはない。
必死に指揮をとろうとしているのに、その指揮を見ずにどんどん全体が動いていくのは大人になってよりわかったし、怖いことだともわかった。
その指揮がいいものなのか悪いものなのか、考えなくてはいけないことも。