第四回戸越八幡神社一箱古本市のこと③
そうして始まった、夏の戸越八幡神社一箱古本市。
開始直後は、木立の隙間から差す日差しが照らす箱もあり、心配でもあったが、気付くとそれもなくなっていた。
出店者の一人のまわりは、虫が嫌うアロマの香りで満ちている。
蝉の鳴き声が近い。今年初めて蝉の鳴き声を聞いたわ、という声を聞く。
じゃばらサイダーに足を止めた女性においしいですよと声をかけたら、私の地元のサイダーなんです、という応え。これは失礼しましたと慌てる前で、懐かしいと笑う。
バケツにはった氷水の中からサイダーを抜いて水気を拭きとる。夏らしいなと勝手に思う。
後ろで出店者の方が、他にも一箱に出たことありますけど、ここの神社の雰囲気が好きで、というのを盗み聞きしてしまう。
そう言ってくださる方は多くて、出店したくなる場所と思って頂けて嬉しい。
なんだかんだと準備からずっと神社にいたせいか、外の暑さを忘れている。
もちろん、ベースは暑い。夏だから当たり前だ。
それでも、湿気はあるにせよ、びっくりするほど暑くない。
外から神社をのぞくと、 アスファルトを照らす光と比べて 本当に暗く見える。
一歩入ると、少し大げさかもしれないが別世界だと感じる。
時折強い風も吹き、台風の名残を感じながら、それでもあっという間に時間は過ぎた。
終了後は打ち上げを予定していたが、大事をとって、30分だけ軽く飲む。
それはそれで、風のように終わるのも悪くない。
雨も降らず、厳しい暑さにもならず、木立に守られて無事に閉幕を迎えられた。
片付けも済み、最後に実行委員だけで神社にお礼を言って帰る瞬間が好きだ。
今年も、ありがとうございましたと揃って頭を下げた。