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お弁当はぜったいに残したくなかった

今の仕事場になってから、お昼はお弁当になった。
なんのことはない、おいしくて安いご飯どころが近くにないせいだ。
買い食いが苦手なので、お弁当しかなかった。



数年前までは、毎日お弁当を作っていくなんてとてもできないと思っていたのに、気付けば2年近く続いている。
一人だけのお弁当だから、作り置きがメインだ。週末に用意して、足りなくなったら夕飯と一緒に作る。


学生時代も母にずっとお弁当を作ってもらっていた。
だからだろうか、お弁当の本が好きだ。レシピ集も悪くないが、エッセイが。


なんといっても、平和だ。
一つとして同じお弁当はなくて、おかずには故郷の味があり、奥さんの話や、子供の話、そして必ずといっていいほど自身の子どもの頃の思い出のエピソードが入る。



元号が変わった。
日付がかわった瞬間に鐘の音を一つ聞いた。
令和の時代も、お弁当の本が好きだ、と言えるような時代であって欲しいなと思う。




阿部了:写真  阿部直美:文 「おべんとうの時間(4)」
(2018、木楽舎