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新しい元号の発表は静かに聞いていたかった

4月だ。月曜始まりの。
朝から、電車に乗れば、新入社員だなと一目でわかる集団に押される。
真新しいスーツ、判を押したように一つに縛った髪を揺らすベージュのトレンチコート。

 

帰りも、定時にあがれば、若い集団ががやがやと固まって帰っている。
その様子は、まだ学生にしか見えない。

 

 

自分もこんなだっただろうかと思う。
そうしていれば、怖くはなかった。埋もれることに。
でも、埋もれている姿が、今は怖い。みんな同じだ。区別がつかない。

 

 

あの頃憧れて買ったベージュのトレンチコートが、気に入っているのに今は怖くて着られない。
かわりに墨に似た黒のチェスターコートをひっかける。

 

 

今年の春は、門出に桜の姿がある。