第三回戸越八幡神社一箱古本市のこと①
厳しい残暑を超え秋になったと思ったら、台風が次々に日本を通った。
秋の長雨で、週末のイベントが潰れていった。
朝の天気予報で一週間後の予報に、開催日が入るようになった頃から、天気が気になって仕方がない。
屋外での開催になるから、雨だったらなくなってしまう。
開催日の二日前、雨が降った。しっかりと降った。
前日の朝に神社に行ってみると、神社はしっとりと濡れていた。石畳はびしょびしょで、土の地面は湿っている。
これは困ったなぁと思いながら立ち尽くしていると、神社にいついている黒のブチ猫が現れた。
少し離れたベンチの下に転がり込んだので、しゃがんで彼の様子を伺った。
しばし、見つめると、仕方ないとばかりにこちらにすり寄ってきて鳴いた。
一度きりかと思ったのに、数回、離れてはすり寄るを繰り返してくれた。
あたたかい体に触れていると、大丈夫な気がした。
八幡様の前に、彼に対して「うん、大丈夫だよね、お願いね」と呟いた。
そうしているうちに、心配性の自分の代わりに大丈夫と言ってくれる人たちがやってきた。
雨をこえて、今日は夏日と言ってもいいくらいの陽気だ。
鬱蒼としているが故に木の天蓋から差し込む光は多くはないが、去年のことを思いだした。
去年も前の前の日に雨が降っていて、前の日は、まさに今日と同じような状態だった。まったく同じだ。
だから、きっと大丈夫だと思った。
第三回 戸越八幡神社一箱古本市の前日