子供の頃から、ご飯よりおやつが好きだった
格言だ。言い得て妙だ。
始めは、お店の名前だとは思わなかった。
人はご飯を食べないと生きていけない。けれど、おやつはなくても生きていける。
ただ、おやつがない人生は、多くの人にとっては味気ない。
そうでなければ、こんなに巷にスイーツ店があるわけない。行列ができるわけがない。
本は、必ずしも人生には必要ない。なくても生きていける。
けれど、本がない人生は、ある人たちにとっては味気ない。
そう、本は、ご飯ではない、おやつだ。
私はおやつが好きだ。仕事をしていると、3時に必ずと言っていいほど、集中がきれる。
コーヒーブレイクといきたい。ここは我慢してチョコの一つ二つで良しとしよう。ちょうど脳も疲れている。
それに加えて本が読めれば最高だ。珈琲一杯の時間だけでも頁をめくりたい。そんな人種は、少なくないはずだ。
そんな、本好きなら、よくぞこの胸のうちの想いを的確に表現してくれた、と言いたくなるような本屋は、ひっそりと大都市に佇んでいた。
看板を見逃してしまったら、通り過ぎてしまうようなビルの二階の小部屋。
店主もまた、本の山の谷間のレジで可愛らしいブックカバーをつけた文庫本を読んでいて、危うく見逃しそうになる。
大事に取り扱わなくてはと思う古い本から、新刊まで、仲良く棚に収まっている。
そして、可愛らしく味のある雑貨が彩りを添えている。
小部屋なのに、それに比べてイスが多い。
荷物を置いてください、よければ少し座ってあなたに呼びかけている本がないか下の段まで見てください、と言われているようだ。
呼びかけに本から顔をあげた店主は、旅行者の問いに、次々と近場の古本屋さんを紹介してくれた。
そして、客が手にした本や雑貨について、きらきらと目を輝かせる。私もそれ大好きなんです、と。
ご飯もおやつも、一人よりは誰かとともにしたほうが楽しい。
おいしいものを、人生に彩りを添えてくれるものを、誰かと分かち合えたらいい。
本は人生のおやつです!!
大阪府大阪市北区堂島