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息子はしっかりと父を見ていた。それを娘は目の当たりにした。

祖父は、両人とも戦争に行った。
父方の祖父はパイロットだった。

 

直接、話を聞いたことはないのだが、祖父母の家の居間には、飛行服姿できりりと立つ若い祖父のセピア色の写真があった。
その横には、各地に旅行に行った際に集めたのだろうキーホルダーも飾られていて、コレクターでもあった祖父は、戦時中の手記を残していた。
それを知ったのは、祖父のお葬式でだった。

 

そんな祖父の息子である私の父は、紙飛行機を趣味にしている。
ピンとこないかもしれないが、折り紙で作る紙飛行機ではなく、ゴムで飛ばす紙飛行機だ。
飛行力学とでも言えばいいのか、しっかりと主翼や尾翼を調整し、うまく風にのれば何十分でも飛んでいる。
協会もあり、全国で大会がある。

 

父は、理系でその方面にも明るいので、オリジナルの紙飛行機の設計もする。
祖父のお葬式に、父は、零戦の紙飛行を作り、棺に納めていた。
そして、もう一つ用意したのは、祖父の手記が載った新聞だった。

 

戦時中、飛行機にのって戦地に向かう日々が綴られていた。
こんなことを言っては不謹慎かもしれないが、私にとっては、とてもおもしろいものだった。

 

私が知る祖父は、ひょうきんなところのある人だったが、若い頃も、ましてや戦時中でもそれをなくしてはいなかったらしい。
文面に、あまり暗さは感じなかった(もちろん、わざとかもしれないが)。
ある日には、「ついに、俺も男になった!」とも書いている、若い祖父がそこにいた。

 

お葬式に行くと、初めて知ることも多い。
その時になって、初めて祖父を知った気がした。

 

そして、それを見送る父を想った。
父も、祖父に似てひょうきんな人だ。

 

 

 

終戦の日 1945年8月15日