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たたずまいが山に似ている本がある

「花綵列島(かさいれっとう)」という言葉を初めて知った。

 

花綵(はなづな)(草花を編んでつくったつな)のように並ぶ弧状列島のこと、らしい。
何のことを言っていると思うだろうか。

 

私たちの住む、日本列島のことである。
なんて、素敵な呼び名だろう。心が震えてしまった。

 

そんな日本列島を、例えば衛星写真で見てみると、驚く。
ほとんど山じゃないか、と思う。丘陵地を含めると7割らしい。

 

 

そんな山を季節ごとに、山を描いた本と結びつけた一冊。
たくさんの人が山の魅力に取りつかれ、山を描いたエッセイのなんて魅力的なことか。
簡単に登れないからこそ、憧れてしまう。

 

夏であれば、生命の息吹に満ち満ちた山を、
冬であれば、命さえ奪う厳しさの反面、深い深い静けさを。
多くが、内省の時間を冬の山で過ごしている。

 

沖縄に赴いた際、ガマ(自然洞窟、防空壕)に入り、一切の灯りを消した新の闇を経験したことがある。
それと同じで、私は、本当の静寂、というものを体験したことがないと思う。
冬の山は、それを教えてくれるところだとある。

 

おいそれとは行けない冬の山の静寂に、憧ればかり募る。

 

 

大森久雄 「山の本歳時記」
(2008、ナカニシヤ出版)