冷めてもおいしい不思議な箱の中身
人に作ってもらったお弁当は、なんて美味しいんだろうな、と思う。
久しぶりに、知り合いの手作り弁当を食べた。
高校生の頃、学食のない学校だったので、母親にお弁当を作ってもらうようになった。
その頃はとにかくお腹がすいていて、二段弁当だった。
その後、大学生になり、立派な学食があるにもかかわらず、4年間で使ったのは二回だけ。
あとは、ほとんどお弁当を作ってもらって、ベンチで食べていた。
その頃になると、一段弁当になっていた。
そして社会人になり、配属された場所で社食に恵まれず、まだその頃、弟のお弁当を作っていた母にお世話になった。
恥ずかしながら、ずいぶんと大人になってからも母親にお弁当を作ってもらっていた。
実家を出て配属先も何度か変わったが、社食に恵まれたのは一年と満たないぐらいで、今の配属先も例に漏れず、食べるところも少なく、買い食いに一週間で飽きてしまう私は、やっと自分でお弁当を詰めていくようになった。
料理の中心はお弁当用の作り置きのできるおかずになり、知らずに母から教わっていたお弁当づくりの知恵をもとに、自分でも驚くくらいお弁当づくりは当たり前になった。
もう、母のお弁当を食べる機会はないに違いない。
そう思うと、最後のお弁当はいつだったのだろう、と思った。