
ちゃんと見てよ、一番の笑顔をしているはずだよ
電車の中で、その男の子は好きな歌手のライブのために、東北のとある地方都市まで夜行バスで行くのだ、と友人らしき男の子に話していた。
後姿しか見えなかったけれど、声がきらきとしていた。
けれど、友人は「そんな遠くまで行くなんて、ありえない」と笑って一蹴していた。
それを聞いて、私は驚いた。
言われた男の子は、怒ることもなく、「だって、好きだから」と、きらきらは消えなかった。
その友人の子には、好きなものがないのだろうか。
一蹴されても、いいんだ好きだから、と笑ってしまうほどの好きなものはないんだろうか。
もし、自分の好きなものに対してそんなことを言われて、何も思わないのだろうか。
例えそれが、自分には理解できないものであっても。
そんな悲しいこと。
好きなものがあることの心強さを、誰かに笑って欲しくない。