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元気にしているよと教えに来たよ

横断歩道の向こうに立つ人と、目があった。

 

目があったまま、私は、そのまま見つめ続けていた。
相手も同じだった。
互いに目を合わせたまま、自分が何をしているか気づくまで、そうしていたと思う。

 

そして、知らない人と目を合わせたままは変だ、とお互い気づいたように目をそらした。

 

どうして?と私は下に目を落として考えた。
普段から道を歩いている時は周りの人の顔なんて見ない。そのせいで、知り合いであっても、こっちから気づくことは滅多にない。

 

そんな普段であるのに、吸い寄せられるように目を合わせたまま、それが自然であると、束の間でも感じていたのは何故だろう。

 

そして、気づいた。
もしかして、あの人じゃないか?
数年前、私に多大な影響を与え、けれど離れ、連絡も取り合っていない、あの人じゃないか?

 

けれど、お互いに何食わぬ顔で、青になった横断歩道をすれ違った。
そのまま歩き続け、似ている、やっぱり似ている、とむくむくと思いは膨れ上がった。
それでも確信は持てず(何しろ私は目が悪い)、例えそうであっても、会わなくていいような気がした。

 

もしあの人であったのなら、こうして、相変わらずおしゃれで元気そうにしている姿を見られて良かったと。

 

 

だから他にも、会えなくても会えない、あの人もその人も、きっと元気にしているんだ、と思った。