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誰もが手探りしながら歩む、最初の道がある

生まれた時からテレビがあった。カラーテレビだった。
だから、テレビの草創期の話なんて、まったく想像がつかない。

 

街頭テレビをみんなで楽しんでいるのはドラマの中などで知っているが、そのテレビの中はどんなだったのか。
まさか、全てが生放送だったなんて。ドラマも例外ではない。今ではとても信じられない。

 

その草創期に女優として生まれたのが黒柳徹子さんことトットちゃん、というのは有名かもしれないが、彼女が何を思いながら毎日を過ごしていたか。
それに触れることが出来るこの本からは、彼女の心優しい本質と、仕事や人に対する姿勢を知ることができる。

 

今、草創期と比べて驚くほどテレビ技術は進化している。ハードは進化した。では、ソフトはどうか。テレビ番組の内容はどうか。
この作品は私が生まれる前のものだけれど、既に彼女はそう危惧している。

 

印象深かったのは、彼女が、誰それの真似なんかするなと怒られて、心の底からそれを侮辱とうけとり悲しんだこと。
そして、インタビュー記事に全く言った覚えのないことを読者受けするように書かれて、怯え、悲しむ部分だ。
自分らしくあるためには、一体どう生きていけばいいのか、と彼女は悲しむ。

 

終始、彼女は自分らしくあろうとしているのが伝わってくる。
けれど、それがなかなかうまくいかずに悲しむ場面も多い。

 

 

一人の女性が、ただただ自分らしくありたいと願いながら、毎日を戦うようにして駆け抜けている。
笑ってしまうような失敗談も多くて、テレビってこんなだったの!?と楽しく読めるが、私には一本通った彼女の芯を感じずにはいられない。

 

 

 

黒柳徹子 「新版 トットチャンネル」
(2016、新潮社)