誰が最初に風の音を文字にしたのだろう
ごおごおと、風が鳴っている。
ここ数日、暑さと比例するように、風が強い。
けれど、こんなに風が吹いているのに、部屋の中には一向に風が通らない。
ばたんばたんと玄関の戸を鳴らすばかりで、温まった部屋を冷やしてくれない。
換気扇の羽根が、時折カタンカタンと震える。
私のいる小さな箱を抱えたのっぽのビルが、強風をその身に受けて立っている。
その体にぶつかる音が、私の箱の中に入ってくる。
部屋を暗くして、その音の渦の中に沈んでみる。
あまり、うるさいな、と思うことはない。人の出す音の方が気になる。
窓を開けていると、地上の声は、びっくりするくらいよく聞こえる。
会話の内容まで聞こえるから、時には耳をふさぎたくなることもある。
けれど、自然が出す音は違う。
それこそ、ごおごお、と書いてあるかのように鳴る風は、聞いていて嫌ではないし飽きない。
飽きるようなものではない。