
まるで魔法みたいに笑ってしまう
仕事から最寄りの駅に着き、ホームからエスカレーターで下っていると、上りの向こうから手が伸びてきて軽くたたかれた。
「ちょっと、やだ、びっくりした!」
そこには見知った顔。
こんなことを言っては失礼かもしれないけれど、東京のお母さんくらいにお世話になっている読書空間のスタッフさんだった。
こんなところですれ違うなんて、なんて偶然だろう。
仕事帰りなのか見慣れぬ服を着ていても、その溌剌とした笑顔はいつものものだった。
私、疲れた顔をしてなかったかしらと恥ずかしくなりながら、一瞬で気持ちが晴れた。
隣の県から出てきて東京の一所に腰を落ち着けて街に知り合いもできて、こんなふうに街中ですれ違って一瞬でも気持ちを分け合えるようになれたことが、とても嬉しい。
生まれ育った場所から外に踏み出してきたことの尊いこと。
もっともっと外に行ける気がしてくる。
生きて行けるところはいっぱいある。