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良い一日だったと空を見上げた

お休みをとって、朝一番の早い回から映画を見に行った。
本好きを通り越して本の虫のおじさんが出てきた。
彼の住んでいる部屋は畳敷きで文机があり、本棚から溢れた古い本たちがそこかしこに山積みになっていた。

 

その彼と女子高生が図書館にいた。
彼女はあまり本を読まない。
お勧めの本はありますか?と聞く彼女に、彼は笑って首を振った。

 

前情報もなく見に行ったので、彼が本好きということを知らなかった。
知らなかったけれど、彼の本に対するその台詞は私と全く同じだったので嬉しかった。
本を読むことは一人の作業だ。読む本を選ぶのは自分だ。
けれど、そう見えて実は違う。目が合う。呼ばれる。

 

 

ほっこりとした気持ちで、次に私は大好きなカフェにお昼を食べに行った。
大事に育てられた野菜を使って、工夫を凝らして作られた野菜プレートはおいしくて綺麗で仕方がない。
とうもろこしが本当に甘くておいしくて、びっくりした。

 

幸せな気持ちで食べていると、横にいた初老の男性とカフェのご夫婦が話を始めた。
その男性は大学の教授らしく先生と呼ばれていて、本の話を楽しそうにしている。
本を処分しようとしているのに、増えていく一方ですよ。あの本屋さんは楽しいんですよね。

 

そして、神楽坂にある聞き馴染んだ本屋さんの名前を奥さんが間違えて仰っていることに気づいて、私は思わず口を挟んでしまった。
横で聞いていて話に入りたくてうずうずしていたのだ。
その後は、ひとしきり本の話や映画の話をした。
映画に引き続いて、本好きさんの輪が広がった。

 

次に私は、またしても大好きな場所、大好きな美容院に向かった。
前髪がずっと邪魔だったのだ。
本当に気持ちのいい空間で、行くのを心待ちにしているのだ。

 

 

そんな、好きな場所の梯子をした日だった。
仕事で追い詰められていた自分が緩んでいった。