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自分の願いごとが自分のものだけじゃなかった時のこと

どうしよう。なんて可愛いんだ。

 

 

一緒のクラスだったのは一度しかなかったけれど、高校三年間ずっと共に図書委員だった旧友は、福祉関係の窓口のお姉さんをしていて、子供向けのスペースに絵本を見繕うという、とても楽しげな作業もやっている。

 

私が初めて神保町を訪れたのは高校の図書委員として司書さんと本の買い出しに行ったときで、それはもう職権を乱用して読みたい本を片端から買っていくという夢のような体験をした。
その時の体験を未だに思いだしては語り合う、そんな旧友である。
たぶん、同じような体験をしている本好きさんは、少なくない。

 

さて、その彼女と一緒に本屋さんに出かけると、最近は絵本の棚の前で立ち止まることが増えた。
この絵本すっごくいいんだよと声を弾ませて手にする本は、恐竜の本だったりもする少年のような彼女であるが、この絵本すっごく可愛いよね、え、読んだことない!?少女漫画だから読みなさい!と言われたのが、この絵本である。

 

 

いや、可愛らしさに困ってしまった。
お話しもさることながら、目をまんまるくしているうさぎの、なんて可愛らしいこと。

 

いや、けれど、あながち可愛い可愛いと言っていられるだけのお話しではない。
大人が読むと、ちょっと切なくなってしまう。

 

くろいうさぎが願えば願うほど悲しくなってしまうのは、誰しも経験のあることに違いない。
書いては消し書いては消し、いつまで経っても遅れないメールみたいなものだ。
勇気を振り絞るって、本当に本当に振り絞るものなんだ、と思ったものだ。
小説もドラマも、書いているのは人間だ。生きた言葉だった。

 

それに対するしろいうさぎの台詞がいい。女の子はこうでなくちゃ、と思わずにいられない。

 

 

 

ガース・ウイリアムズ/まつおかきょうこ「しろいうさぎとくろいうさぎ」
(1965、福音館書店)