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格好つけて孤独だと言いたいわけじゃないんだ

恥ずかしいのを承知で言う。
人は寂しがり屋だ。なぜか。他人と気持ちを共有できないからだ。
だから、自分のことを理解してくれる誰かを求めながら生きている。

 

結婚したいと彼女たちが言っているのは、そういうわけだ。
もちろん生活していく上で必要だったりもするけれど、本当は結婚が問題なのではなくて、
「結婚しよう」と言ってくれるほど、自分の一部を分けてくれる誰かにいてほしい、っていうわけなのだ。

 

それが難しいのだけど。
でもだからこそ、不思議と気持ちが通じ合うような誰かと会えた時の幸福感は深い。

 

 

本作の少女と少年は、まさに、互いに互いを補い合うような、ぽかりとあいた喪失にぴったりとはまりあって寄り添いあう二人であった。
思わず、二人の出会いを祝福したし、その後の穏やかなやりとりにも安心したが、羨ましいなと思ったのは否めない。
けれど、ぴたりとはまったかのように見えても、人の心は見えたりしない。

 

読んでいて、少し辛い話だった。
登場人物たちの誰もが、何かしらの孤独を抱えていたからだ。
でも、そんなのきっと自分のまわりにだって当てはまるはずだ。

 

明るいあの人だって、何かの孤独を感じないことはないはずだ。
いくらあけっぴろげな家族だとしても、奥の奥にしまいこんである思いだってあるはずだ。
この小説は別に作りものじゃない、普遍的にあてはまる。
ただ小説というものが、登場人物たちの心を描いているから孤独を抱えていると分かるだけで。

 

 

「双子素数」というものを初めて知った。
少年は数字に愛されていた。
数字にまで双子と名付ける人間が、なんとなく可愛く思えて、それはもしかしたら孤独故かもしれないとさえ思った。

 

 

 

パオロ・ジョルダーノ 「素数たちの孤独」
(早川書房、2013)