私もあんな風に泳げたら気持ちがいいだろうに
縁がなさすぎて、すっかり忘れていた。
弟の、鯉のぼりも五月人形も、飾らなくなったのは早かった。
姉である私のひな人形は、いい歳になっても飾り続けていたが、いったいその違いはなんなのだろう。
ちなみに、私が実家を出て一人暮らしを始めてから、母がひな人形をどうしているかは、なんとなく聞きそびれている。
どちらの回答をもらっても、私はたぶん気まずい。
実家の隣の若夫婦の家には、元気な男兄弟がいて、この季節になると割と立派な鯉のぼりが庭先に現れたものだ。
思えば、ここ数日の都内は風がとても強い。
鯉のぼりの季節は風が強いのか、と今更すとんと腑に落ちる。
青空を背景にして、力強い風に泳ぐ鯉のぼりが遠くに見える景色は、いいものだ。
桜餅も柏餅も、母は必ず用意してくれた。
けれど一人だと、まぁいいかと思ってしまって、もう何年も食べていない。
それに独り者には、個人でやっているお店のショーケースを覗き込んで「一つください」と言うのがちょうどよく、何個も入ったスーパーのパックはハードルが高い。
そうやって、食べたいのに買えないものが少なくない。
そんな時、一人じゃ駄目と言われた気になって世を恨む。
レジに並ぶと、前には、ジャケットに質のいい鞄を肩にかけた若い男の人が、柏餅のパックとお酒を手にしていた。
奥さんに、子供に買ってきてと言われてというよりは、一人で食べるためのように私には感じられた。
もしそうだとして、その姿を想像するのは、なかなかほほえましく思える。
5月5日 こどもの日