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彼は僕と言いながら、たまに俺と言う

男子の後輩から、結婚式の披露宴への招待状が届いた。
後輩と言っても二つしか違わないから、ほとんど同年代だ。

 

こうゆうのをもらうと、はて、自分は何をしているんだろうと思ったりする。
なんだかこう、一人でご飯を食べている場合か?と。

 

携帯のない時代、男と女はどうやって連絡をとっていたのか、不思議で仕方がない。
ましてや、作中の中は、電報の時代である。

 

それでも彼や彼女は連絡をとりあい、遠い地に離れても家のしがらみに足をとられても、縁は切れることがなく、ましてや強固になるようだった。
今の時代では、成り立たない恋愛模様だ。

そして、最後には思い詰める。
そういう時代だったと言えばそれまでかもしれないが、読んでいて、思わず首に手をあててしまった。

 

 

作者を知ったのは、随筆が先だ。
その随筆になぜ惹かれたかと言えば、私は一人でご飯を食べている場合か?に話が戻る。

 

この世に女として生まれてしまった自分が、それを持て余し気味でどうしたらいいのか分からなくなっている時に、まぁ格好いい先達がいるものだと感嘆してしまったわけだ。
自分とは別世界の人だと思う一方で勇気が沸いた。

 

 

偶然なのだが、作中に出てくる地名はお米やの近くで、それもまた読んでいて不思議な感覚にとらわれた。
彼らはこの地で、恋をしていたわけだ。

 

 

宇野千代 「色ざんげ」
(潮出版社、1973)