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お正月の時にお餅を食べ忘れたままだ

写真でなんか、うまく撮れない。
私には、そんな上等なカメラがない。

 

でも、私にはちゃんと見える両目がある。

 

目はよくないけれど、眼鏡越しにクレーターがはっきりと見えた。
大きな大きな月は、最初目線より少し上にいたのに、どんどんどんどん上に上っていった。
追いつかないくらいだ。

 

そして、どんどんどんどん喰われていった。蝕されていった。

 

こんなにしっかりと追い続けたのは、ずいぶん前の日蝕の時以来だ。
あの日は、少し早く出社して、仕事場最寄りの駅のロータリーでグラス越しに見上げた。
そうやって、ぽっかりと上を見上げているスーツ姿がたくさんいた。

 

ああ、もう、マンションの部屋の窓からは身を乗り出さないと見えないくらいに真上にいってしまった。

 

兎が消えている。