
棒のように無言な足を見下ろす
ひどく、細い細い足で立っている人がいる。
ままならない足を、もう一本追加した足と一緒に歩いている人もいる。
ちっとも細くもないのに、歩いてみれば、ふらりふらりと定まらない足運びをしている私がいる。
最近は、どう歩いて行けばいいのか分からなくなっている。
若い頃はがむしゃらで、迷うことはなかった。
ひたすら目の前に投げられてくる敵を、上手く投げ返していくことに夢中だった。
どれだけ上手くできるか、自分と戦っていた気がする。
エスカレーターと階段を目の間にして、なるべく階段を選べる自分でいたい、と強く思った瞬間があった。
運動がてらというよりは、立派な足が二本、自分にはついているんだから、
自分の足で上ることを選べる自分でいたいと思ったから。
そう思った自分を、遠く感じている。
階段を選ぶか選ばないか。
選択の瞬間で世界はあふれていて。
それは、自分を好きになれる瞬間にあふれているとも言えるのかもしれない。