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あの世界はただただ静かだった

静かだ。
雪が降ると、なんでこんなに静かになるんだろう。

 

大雪になると事前に言えば言うほど不発に終わることも多いが、今回は本当に大雪になった。
関東っ子なので、たまに降る雪は嫌いではない。
もちろん、大変なことは多いが。

 

 

吹雪いていると大変だが、降り止んで静かな銀世界の中を、バス停から実家まで歩いて帰ったことがあった。
バス停通りから離れるに従って、道には雪が残り、家がある小島のような住宅街に入ると、びっくりするほど新雪しか残っていないのだった。

 

その日は満月で、降り止んで晴れた夜空は明るく、積もった雪に反射してそれはもう明るく。
会社からやっとの思いで帰ってきたのに、子供のようにはしゃぎながら、新雪にブーツを半分くらい埋めながら帰った。
誰もいなくなってしまったような住宅街に足跡をつけて歩いていくのがただ楽しくて、わざわざ遠回りをして帰った。

 

家にたどり着き、大変だったでしょと労う母に、すんごい綺麗で楽しかった!と興奮して答えたことは今でも覚えている。

 

 

あの雪の日のあの世界は、本当に綺麗で明るくて。
だから私は、大変な目にあっても、雪が降るのは嫌いじゃない。