
がむしゃらにやりとおすことはもうできない
新人の頃は、何も考えていなかった。
何年も経った今、それはもう、よくわからなくなっている。
私はなんでここにいるのだろう、と職場の階段を下りながら、ふと思った。
最近、人の目を見て話せなくなっている。
あの人は、宝くじが一枚いくらするかも知らなった。
知らないで、あの年末、宝くじを30枚買って、その値段に驚いていた。
宝くじを買うような人ではなかったのだ。
夢を買いたかったのでなくて、ささやかな願いのようなものだったのではないかと初めて思いついた。
あの頃のあの人は、毎日、夜眠れなくなるくらい仕事を辛く感じていたから。