身軽な旅路に重くなる帰りの両手
朝、朝日で目覚める。
カーテンを開けると、絶好の洗濯日和。
洗濯機を回しながら、出かける準備をする。
寒さが緩んでいたので、少し薄着気味にしてスニーカーを履いて出かける。
一度歩いた道で迷いがないせいか、歩いて30分でもあっという間に目当てのパン屋さんに着いた気がしてしまう。
店の角を曲がると、外に行列。小さな小さなお店なので、3人も入ればいっぱい。
おそらく焼き上がりを目指してくるのだろうご近所さんに混じって、お昼ご飯のパンを手に入れる。
どれも食べてみたくて目移りしてしまうが、次の楽しみにして、欲張らないように。
今日はまだまだ歩く。
少し先の気になっていたマフィンのお店へ。
こちらも住宅街にポツンとある小さな小さなお店なので、スマホの地図を頼りに迷い込んでいく。
なんとか見つけたが、開いている気配がない。
ツイッターで調べてみると、残念、お店の方が渋滞に捕まったようで到着が遅れている。
残念だが、今日はまだまだ先を行く。
次の街にはここから緑道が続いていることを地図で発見し、もう迷わないと安心してあっちこっち見ながら歩く。
静かな緑道のベンチには陽があたり、パンを食べたい衝動と戦う。
緑道が、小さな小さな踏切の先に続いている。
都会の中とは思えないほど素朴な踏切。カメラをもったおじさんがいる。
踏切を超えると、もうそこは電車でよくいく見知った街になっていて、びっくりしてしまう。
あっという間に着いてしまった。
その街には、一箱で出会う顔見知りが古本屋で働いている。
毎日いるわけではないので、会えるかなと思いながらお店をのぞくと、いた。
大きな窓から差し込む陽光で明るい店内は、レイアウトが前と変わっていて、わぁと思う。
なんだか迷路みたいになって、前よりなんだか素敵だ。古本の森だ。
その奥のレジから顔を出して、私に気付いてくれた彼女に挨拶をする。
本を物色しながら、他愛もない話をする。
また、どこかで会いましょうねと笑って別れる。
連絡先も知らないけれど、遠くないうちに本のある場所で会うだろうと互いに分かっているから。
パンと本を抱えて、帰りは楽をして電車で帰る。
帰りは電車で帰っていいんだと思えば、どこまででも歩いて行けそうな気がするから不思議だ。
今度は、もっと先まで行ってみようと思う。