無邪気なおべべ
恥ずかしながら、着物を着たのは人生で一度きりだ。
その時、私は三歳だった。
古い写真のせいか、記憶の中では橙色だが、おそらく赤ではなかったかと思う。
おかっぱの真っ暗な髪は艶々としていて、着物姿に似合っている。
七歳。二回目の着物を着る予定だった。
その日、私は風邪をひいていた。着物は苦しかった。
私は着物は嫌だと駄々をこねて、急遽、襟が黒い白のワンピースで記念撮影をした。
その日のことは、うっすらと覚えている。
私は、本当に苦しくて嫌がったのだろうか。違う気がする。
私は天邪鬼だったので、着物で着飾ること自体が嫌だった気がする。
そうして、成人になっても、その天邪鬼はますます意固地になり。
記念写真も撮らず式にも参加せず。
とうとう着物姿の写真は、無邪気な顔で笑っているたったの一枚しか残っていない。
今となっては、それを残念に思っている。
七五三