写真の枠の外に、きっと彼はいる
私は、行間に惹かれる。
今では、もうそれほどではないけれど、思春期だった頃、私は分かりやすい歌詞の歌が苦手だった。
万人に分かりやすい言葉で、万人に分かりやすいような歌。
例えるなら、歌詞に全く行間がなくて、なんの想像の余地もない歌。
私は、思春期の頃は小説しか読まないような子で、
ストレートな表現ではなく、行間から彼の言いたいことが聞こえてくるような、
何度聞いても、不意に聞こえたフレーズにはっと気づかされるような、そんな歌が好きだった。
まず、タイトルに惹かれた。
そして、写真に惹かれた。
私はレシピ本が好きで、よく料理の本を見るが、こんな料理の写真は初めてだった。
そう、行間だ。
この方の料理の写真はとても独特で、物語を秘めているような雰囲気がある。
そして、やはり、そこには物語があった。
高山なおみ 「帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ」
(2009、文春文庫)