紅の記憶
以前、落ち葉を贈るワークショップに参加したことがある。
そのために、一時期は下ばかり見て歩き、近所の公園を渡り歩いたりした。
そこで気づいたのは、むしろゴミの存在だった。
捨てられた吸い殻の横に、綺麗な紅の葉が落ちている。
拾い上げながら、くるりくるりと回してみる。
日に透かしてその紅に見とれたりした。
浮かれて大切に持ち帰って封筒に入れた。
そして、ワークショップの当日に取りだして驚いた。
紅が消えていた。
あれは落ちたばかりの瑞々しい紅だったのだ。
私はそんなことも知らなかったのだ。
茶のからりと乾いた落ち葉をくるりと回して、記憶の中の紅を探した。