きれいな色の服を
単行本と文庫本の違いはあれど、私はこの本が高校の図書室にあったことを覚えている。
単行本は青っぽい装丁だった。17歳の私は、その本を棚から抜き出したことがあった。
有名な作品だ。
17歳の女子高生が、25年の時空を超えて42歳の自分になってしまう、という話。スキップだ。
当時、17歳だった私は、25年をスキップしてしまうという設定に対して、どうなるんだろうというワクワク感よりは、逆に怖さを感じて手に取らなかったのかもしれない。
17歳をとうに過ぎ、けれどまだ42歳は遠い位置にいる私だが、今読めてよかったと思う。
少し前、実家の自分の部屋を掃除している際に、中学生の時の卒業文集を見つけた。
恥ずかしくてとても文章は読めなかったが、クラスページはかろうじて見た。
将来どうなっていたいかというアンケートに答えている。
そうなっていなくてごめんよ、中学生の私、と苦笑いしながら文集を閉じた。
そういうことだ。15歳の私は、きっと将来そうなっていると疑うこともなく思っていたはずだ。
将来とは、なんだかんだ、明るいものだと思っていたはずだ。
それが、25年間もの長い間をすっぽりと奪われるのだ。絶望してしまう。
それなのに、彼女はなんて強いのだろうか。17歳の自分を大事にしつつ、42歳の自分を生きようとしていく。
過去の自分にあやまるのではなく、胸を張れるように踏ん張らなくてどうするんだ。
北村薫 「スキップ」
(新潮文庫、1999年)