逃げるよりこっちから抱きついてしまえ
たぶん。
私に、乗り越えろ、と世界が言っているんじゃないだろうか、と思う。
大きいお腹を抱えて歩く姿を見つけたら、もうすぐ生まれるんだという会話が聞こえてきたら、その場から逃げてしまう。
どうしても逃げ出したくなるような傷ができてしまっていた。
でも、逃げれば逃げるほど、その事象は目の前に現れてくるのだ。
不思議なぐらい次々と私の身近な人に、私の隣の席で、その事象は立ち現われ、私を追い立てた。
分かっている。意識しすぎているから、その事象が追ってくるんだと。
それを冷静に分析できるように、やっとなったきた。
意地悪ではなく、世界が全力で私を励ましている気がしてきた。きっと乗り越えられると。
今夜もやっぱり、一人で晩御飯を食べている横の席に、大きなお腹の彼女と彼が、生まれてくる子の名前の話をしている。
どうせ逃げ切れないのだから。振り返って、抱きつきにいくぐらいの気持ちで。
灯りをぱちんと消してしまうな。