
なにもかも連れ去って
都内は見事な台風一過であった。
昨晩は、深夜に窓に叩き付ける雨音と風が鳴らすドアの音で目が覚めた。
あんなにドアが鳴っていては、マンションの隣人に迷惑かと思ったりしたが、たぶんあっちも同じだろうと眠い頭で考える。
カーテンを開けて、しばらく窓で弾ける雨粒を眺めていたが、重い瞼に抗えずに眠っていた。
嵐は好きだ。
安全な家の中にいるから、そんなことが言えるのだが。
逆に、自分は今、安全な家の中にいるのだと、ほっとするから好きなのかもしれない。
明日はきっと、なにもかもが連れ去られたような、ものすごくいい天気なんだろうなと思った。
そんなふうに気持ちよく、私の悩みもしがらみも、全部連れて行ってくれたらと思う。
どんなに自分が嫌になっても、自分からだけは、どうやっても逃げ出せない。
でも、どんな時でもいつまでも、自分の一番の味方は自分だけだとも思う。
朝起きてカーテンを開ける。ほら、と思う。洗濯日和だ。
マンションから外に出ると、道には葉っぱが散らばっていた。
力強い日差しが、駅のホームに模様を作りだしている。