パールを受け継ぐ
一人暮らしを始めた時に決めたことは、少ないもので暮らそう、だった。とは、以前にお話しさせて頂いたことである。
それにはもう少し付け加えることがある。
それは、長く付き合えるもので、少ないもので暮らそう、である。
ずいぶんと格好つけた目標だけれど、私がなりたい大人像なので、精進するのみである。
私の持ち物の中で、祖母、母と受けつがれて私の手元にやってきたものがある。
ピンクパールの二連ネックレスである。
母は三姉妹の真ん中で、若い頃に祖母が三姉妹にそれぞれ自分のものを譲ってくれたらしいが、母だけ二連がいいと駄々をこねたという。
真ん中だから自分は変わり者なんだと、常日頃言う母である。
そんなネックレスを母から受け継いだ時は嬉しかった。
多少値は張っても長持ちする良いものをというのは、両親がそのタイプだったから自然と受け継いでいた自覚はある。でも、もっと遡れるのだ。
「おばあちゃんは、良いものを大切にしてたなぁ」と、母は笑っていた。
ものとの付き合いはその人柄がでるものだ。また一期一会というは、けして人との出会いだけではなく、ものとの出会いも当てはまる。
そんな一期一会を逃さず自宅に持ち帰り、大好きなものを暮らしの中に溶け込ませ、大切に付き合い続ける作者の話は聞いていて飽きない。
中川ちえ 「ものづきあい」
(アノニマ・スタジオ、2007